性欲に狂った男

「何でしょうか、あれ?」

 

雨音を聞きながら、佐々木夫人と世間話をしていた松富は、遠くで女の悲鳴を聞いたような気がした。

 

美奈代も、彼女を探しに行った枝妻夫人も、全然戻ってくる気配がない。

 

立ち上がって廊下に出た松富は、腰の定まらぬ自分にびっくりした。

 

酒がだいぶ効いている。

 

松富がよろけながら廊下を歩いていると、あえかな喘ぎ声が耳に入ってきた。

 

ちょうど襖が少し開いていたので、そこから中の様子をのぞき見て仰天した。

 

「わあっ」

 

見合いの相手であるはずの美奈代が、夜具の上で男に組み敷かれ、したたかに犯されていた。

 

いや、美奈代は男の首に両腕を回し、恍惚の表情を浮かべて交わり続けているではないか。

 

「うぅ、はぁ、うぅ、はぁ」

 

男の腰の動きに合わせて、美奈代はしばらく荒い呼吸を続けていたが、やがて、男の肩胛骨のあたりの肉に爪を立て、かきむしりながら、

 

「ああ、ふぅ、あっ、あっ、あーーーっ」

 

とひときわ高い声を上げて、果てた。

 

その声に我に戻った松富は、見てはいけないものを見たと思い、ピタリと襖を閉め、向かいの部屋の襖を開けた。

 

彼の頭では、そこが広間のはずだったが、そうではなく、その部屋では枝妻夫人が髪を振り乱して男の体の上で騎乗を続けているところだった。

 

肉付きのいいゴムまりのような女体が、赤銅色の男の肉体の上で弾んでいる。

 

夫人の額には、汗で前髪が張り付いていた。

 

「うぅん、はぁ、うぅん、はぁ」

 

「あふん、ふぅん、あぁうーーーっ」

 

と叫ぶと頭を腕に挟む格好で硬直し、ブルブル震えた。

 

気をやったのだ。

 

数秒後ハァッ、ハァッという荒い呼吸が戻り、

 

「うふふっ、これで4回目。」

 

と男に笑いかけると躯を横に倒して、男を自分の上になるよう引き寄せた。

 

そのとき、性の歓びに潤んだ枝妻夫人の目が松富の目と一瞬ぶつかり合ったが、夫人の眼中にはもう松富はいない。

 

松富は予想もしなかった性の交歓を2度も見せつけられ、酔いも手伝って、極度に興奮してきた。

 

ちょうどそこへ酒を運んできた今日子と廊下で出くわした。

 

小首を傾けてこちらを見た清楚なその姿に、松富の中の野性が弾け飛んだ。

 

野獣のようなうなり声を上げながら、松富は今日子に襲いかかった。

 

ガラガラ、ガシャーン、とすごい音を立てて、今日子の持っていた盆ごと酒の入った銚子が落ちて砕けた。

 

今日子は一度は松富の腕の中からすり抜けたが、廊下の角で足袋が滑り、転んで手を突いた。

 

しめたとばかり松富がその腰にかじりついてくる。

 

今日子は手で押しのけようとしたが、性欲に狂った男は、なんとしても今日子を捕まえて離さない。

 

今日子の顔に背を向けて馬乗りになると、松富は着物の裾をたくし上げ、白くすらりと伸びた脚を露わにして舌を這わせた。

 

それから手指を股の奥深くまで差し入れると、いきなり熱い花園に触れた。

 

「うひょーっ、ノーパンか。」

 

松富は狂喜すると、クロスさせた両手で今日子の細い両足首をしっかり握り、腰を上げて体の前後を入れ換えると、今日子と正対する格好で手を片方ずつ足首から太腿へ移動させるとグイッと大股開きさせた。