胸元まで露わになったドレス姿
「推理力と、あと人脈ね。」
聡志にはうすうす分かった。
何らかの方法で母の逢引きの場所を掴んだ彼女は、普門亭のあの男から小瓶をもらい受けたのだろう。
今日子は、そこまで知らなかったに違いない。
美奈代と別れた聡志が、ホテルを出てから社長の美詠子に電話で報告すると、美詠子は「分かったわ。
ちょっと話したいことがあるから、オフィスに来て。」
と言った。
オフィスに来るのは、採用面接以来のことである。
面接では、履歴書のチェックのあと、服を脱いで全裸での身体チェックを受けた。
裸の聡志をいろいろな角度から眺め、最後に前に立った美詠子は、笑みを浮かべて、
「今、ここで私を抱ける?」と聞いた。
スラリとした伸びやかな肢体をスーツで包んでいる美詠子は確かに魅力的だったが、緊張感の余り、勃起するかどうか不安だった。
「お時間をいただければ、可能です。
30分ばかり。」
聡志は答えた。
「それは、どういうこと?」と尋ねる美詠子に聡志は、香辛料のことを正直に話した。
ある種の香辛料をのむと、半時間ほどで意思にかかわらず勃起すること、勃起は最低2時間継続すること、この方法で勃起した場合には射精できないこと。
また、寝不足時や肉体疲労時には効果がないことを説明した。
美詠子は面白がった。
「なるほどね。
じゃ、キミの場合、そのおクスリの原料調達費については、会社が支給することにするわね。
決まり。
キミを採用するわ。
がんばって。」
そう言って彼女は握手を求めてきた。
それで面接は終わりだった。
そんなことを思い出しながら、聡志は洒落たマンションの5階にあるオフィスのドアの前に立った。
まもなくドアが開いて、下は太腿が、上は胸元まで露わになった黒いカクテルドレス姿の美詠子が現れた。
「トクちゃん、お疲れ。
入って。」
美詠子は机に直接腰をかけた。
机上に散らばった書類を見ながら、
「トクちゃん、3日後は枝妻夫人からあなたにオファーが来ているの。
午後2時半。
だから、佐々木さんの娘さんには岩本君にお願いしようかと思って。」
と言った。
「それで、娘さんは納得されるでしょうか?」聡志は聞いた。