相手が性的に満足

「はうっ、くぅーっ、くぅーーっ」

 

今日子は両手でこぶしを作り、そこに額を押し当ててよがり声を上げ、腰を揺すぶる。

 

聡志は2、3度深く抽送してから体を離した。

 

今日子の躯を横たえ、それから仰向けにする。

 

そして両脚を開かせ、体勢を整えて欲棒を蜜壺に挿入すると、ジュブジュブと愛液が泡立つ音がした。

 

聡志は肉棒を抽送しながら、今日子の尻肉に手を回して揉みしだく。

 

「ああ、ああ」今日子は恍惚の表情を浮かべて躯の奥底からため息を漏らした。

 

両腕を胸の前でクロスさせ、両手を喉元のあたりに当てていた。

 

長い髪が夜具の上に扇のように広がって波打っている。

 

「はぁ、うん、はぁ、うん」

 

いつしか今日子のよがり声が追いつめられた感じになったかと思うと、

 

「はぁう、はぁう、うーーっ」

 

ほどなく今日子はひときわ高い叫び声を上げると、ガクガクと全身を緊張させ、それから崩れ落ちた。

 

あらわになった陰部近くの草むらには、淫水が露の玉となってキラキラとした光を放っている。

 

聡志はすっきりしない気持ちでいた。

 

意図してかしないでか、今日子は最後は自分で自分を刺激して絶頂に達した。

 

聡志の行為で達したのではない。

 

しかし、いかなる理由にせよ相手が性的に満足し、交合の続行を望まない以上は、仕事は終わりである。

 

急いで服を着ると、部屋を出て、襖を静かに閉めた。

 

まもなく、最初に案内された部屋のインターホンが鳴った。

 

今日子はまだ立てる状態ではない。

 

仕方がないので聡志が出ると

 

「トクちゃん、お見事でした。」

 

と佐々木夫人の声が聞こえてきた。

 

「奥様。」

 

という聡志に、夫人は

 

「忘れ物は、帰りに玄関で受け取ってね。

 

では、ごきげんよう。」

 

とだけ言って、電話を切った。

 

聡志と今日子との交わりを、部屋に仕掛けたビデオカメラで見ていたのであろう。

 

物好きなものだ。

 

聡志は苦笑して部屋を出ると、階段を下りた。

 

玄関に行くと、そこには初めて見る下足番のような初老の男がいる。

 

「奥様からことづかった物を引き取りに来たのですが。」

 

と聡志が言うと、

 

「はいはい。」

 

と男はニコニコ笑って、白い封筒を差し出した。

 

中に小瓶が入っている気配はない。

 

「あの、これですか?」

 

と尋ねる聡志に、男は

 

「はいはい。」

 

とまたニコニコ笑うばかりである。

 

仕方なく中を見てみると、中に白い紙が一枚入っているきりである。

 

そこには、

 

「明晩7時半、ホテル・マルブルグ3階『紫紺』で。」

 

と女の文字で書かれてあった。