女が若さを保つ秘訣

この娘さん、性体験もそれほどないのに、よほどよかったのか、男二人としたいだなんて、きっと冒険がやってみたい年頃なのに違いない。

 

「それで、その二人なのですが・・・こちらから指名できますか?」

 

それまで弱々しい声で話していた美奈代だが、最後の言葉に心なしか声に力がこもっている。

 

美詠子はついつい引き込まれてしまった。

 

その日は、朝からしとしとと雨が降り続く土曜日になってしまった。

 

普門亭の大広間に入った枝妻夫人は、待ち受けていた佐々木夫人を見て、にっこりとした。

 

今日は二人とも洋装である。

 

「こんにちは。

 

相変わらずお若いわね。」

 

「そちらこそ。

 

とても私より年上には見えないわ。」

 

「やぁね、年上だなんて。

 

ほんの数ヶ月上なだけじゃない。」

 

年上といわれた枝妻夫人は佐々木夫人の傍に座って、声を落とし、

 

「カンちゃん、よかったわぁ。」

 

と耳打ちするように言った。

 

「カンちゃん?ああ、トクちゃんね。

 

どう、すごかった?」

 

「すごいのなんのって。

 

あんなに味のいいのは生まれて初めてよ。

 

で、いくらやっても弱らないの。」

 

「そうなの、そこがすごいところ。」

 

「もう何度気をやったか。

 

最後は息も絶え絶えになって、意識が朦朧としてきたわ。」

 

「私も同じ。

 

ああ、思い出すだけで濡れてくるわ。」

 

「ホント、若返るわよね。

 

あれだけ気をやれば。」

 

「あなたの言うとおり。

 

女の躯はね、男と接している限り朽ちないわよ。」

 

女学生のように二人が話をしていると、美奈代が入ってきた。

 

「なんの話してるの?」と彼女が聞くと、佐々木夫人は、

 

「女が若さを保つ秘訣についてよね、今日子さん?」と枝妻夫人に言った。

 

「まあ、どんな内容だか分かるけど。」

 

美奈代がぶっきらぼうに言うと、枝妻夫人が

 

「でも、最近サキちゃんセンス良くなったと思うわ。

 

松富さんも一目で気に入ること間違いなしよ。」

 

と持ち上げた。

 

「結婚て、なんのためにするのかよく分からない、母さんとかおばさまを見てると。」

 

美奈代は口を尖らせた。

 

「ダメよ、まだ若いのに、そんなこと言ってちゃ。」

 

「若い子から見ると、私たち3人とも同じよ。

 

オ・バ・サ・ン。」

 

そこへ、襖の向こうから、

 

「松富様がお見えになりました。」

 

と今日子の声がして、和装の今日子と、彼女に案内されて背広姿の男が入ってきた。